食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、簡単に言うと「原因となる食べ物を食べた後、運動が引き金となって発症するアナフィラキシー」です。そしてその原因となる食べ物の多くは、小麦製品と甲殻類と言われています。
さて、わが家の「小麦解除になったはずの息子」ですが「小麦製品を食べて運動をする」と「蕁麻疹」が出ます。
アナフィラキシーではないものの、これって…「食物依存性運動誘発」ではないのだろうかと以前から気になっていました。そこで引っ越し前の主治医と、引っ越し後の主治医のどちらにも同じ質問をしてみたところ、同じ答えが返ってきたのでまとめてみました。
ポイントはω-5グリアジン(オメガファイブグリアジン)
血液検査の項目に「ω-5グリアジン(オメガファイブグリアジン)」というものがあります。
これは小麦のアレルゲンの1つです。まだ息子が小麦に敏感に反応していた2歳児の頃の主治医に「ω-5グリアジン(オメガファイブグリアジン)の数値が低い場合は、小麦が食べられるようになる可能性が高い」と言われたことがありました。
そして今回「運動誘発性か否か」を尋ねた時に先生が数値のポイントとしてあげたのも、この「 ω-5グリアジン(オメガファイブグリアジン)」でした。息子はこの数値がゼロなので、運動誘発性である可能性は低いと思うと言われました。
運動をするとどうなる?
息子の場合、小麦を食べただけではほとんど蕁麻疹は出なくなりました。ラーメンを替え玉しても、です。
しかしそこに運動が加わると蕁麻疹が出ます。これが運動誘発性ではないとすれば何なのか。質問への回答は、
運動をすることによって吸収されやすくなる
ことでした。『たくさんの量を食べたのと同じことになる』と言われたのです。これを聞いて、なるほどと思ったことがあります。
実は息子、食パン1枚を食べられるようになった年中さんの頃に、幼稚園で小さなビスケットを1枚食べたことがあります。これは自宅で一度試したことのある、安全に食べられるはずのビスケットでした。しかし、蕁麻疹が出たのです。
聞いてみると、ビスケットを食べた後に「イモムシになってゴロゴロ動く」という体遊びをしたらしく、激しい運動ではないもののこれが原因だろうと私は感じました。あの時も、小さなビスケットが運動によって吸収されやすくなり、食パン1枚以上を食べたのと同等の症状を引き起こしたのかもしれません。
確かめる方法は?
確かめるには病院に入院して試験を行います。薬を飲むことで症状を引き起こしやすい環境にし、原因物質を食べて運動をし、症状が出るかどうかを確認するのです。これを聞いた時「症状が出るってことは実生活の中で分かってるんだから、この試験はさせたくないわ~」と2度とも思いました(笑)
成長とともに症状が出た時のことや、点滴などの緊急処置をされたときのことを克明に覚えているようになってきているので、不要な試験を行ってきつい思いをさせたくないのです。その結果、必要な負荷試験を嫌がるようになったら困りますし…(うちの場合の考えですが)。
先生によると、食物依存性運動誘発アナフィラキシーを初めて起こした人が確認のためにすることが多いそうです。確かに原因不明でいることは危険ですから。
小麦アレルギーうちの場合
息子の小麦アレルギー制限から解除への道のりは少し変わっています。
①小麦ごく少量OK(ただし、空腹時と食後の運動で蕁麻疹)
↓
②小麦パン1枚OK(ただし、空腹時と食後の運動で蕁麻疹)
↓
③小麦パン1枚OK(ただし食後の運動で蕁麻疹。空腹時でも無症状)
↓
④ラーメン1杯+替え玉OK(ただし食後の運動で蕁麻疹。空腹時&小麦少量なら運動をしても無症状)
すっきりと小麦アレルギーが解除にならずにもやもやしている方もいるかもしれませんが、うちもこのように、場合によって蕁麻疹が出たり出なかったりして「治っているのかどうなのか」随分もやもやしました。
子どもを観察することで上のようなパターンがあることに気付いたのですが、このパターンがあることで今でもお昼ごはんに小麦製品を食べさせることはできません。とはいえ、④の現在では、例えば昼食に餃子3つぐらい食べて、昼休みに走り回っても蕁麻疹は出ません。②の年中時に小さなビスケットでダメだったことが、今では餃子の皮3枚程度なら運動してもOKになってるわけです。
運動して症状が出る=食物依存性運動誘発アナフィラキシーではない場合もある、ということを息子の治療を通して知りました。一方で、食物依存性運動誘発アナフィラキシーはきちんと対策をとらないと非常に危険なので、この可能性を常に頭に入れながら、息子を見守っていきたいと思っています。
参考までに…食物依存性運動誘発アナフィラキシーとはこんなもの
食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、比較的稀な疾患である。
発症機序はIgE依存性であり、食物アレルギーの特殊型に分類される。
好発初発年齢は中学・高校生から青年期である。
発症は食後2時間以内の運動負荷の場合が大部分である。
原因食物は、小麦製品と甲殻類が大部分である。また、発症時の運動は、負荷量の大きい種目が多い(図10-2)。
発症には「食物+運動負荷」にいくつかの増強因子が関与する(表10-3)。アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は増強因子の一つである(図10-4)。
診断は、問診とアレルギー検査から原因食物を絞り込み、誘発試験を実施することが望ましい(図10-4)。
発症を防止可能な薬剤は確立していない。
患者と保護者への教育・指導と学校関係者などへの情報共有が重要である。