アトピー性皮膚炎など皮膚湿疹に処方されるステロイド薬。子どもに使うのをためらう方も多いのではないでしょうか。私もその経験者です。ステロイド薬を使用→ステロイドを使わない治療→ステロイド薬を使用、と変遷してきた経験談を紹介します。
最初はステロイド薬を使ったものの…
長男に湿疹が出始めたとき、皮膚科で処方されたのはステロイド薬でした。しかし治りが悪く、次第にただ漫然と塗っている状態に。塗っても治らないのに塗り続けることに次第に恐怖感が生まれてきました。なぜなら私は「ステロイドは怖い」というイメージを持っていたからです。
「怖い」という気持ちがあってできるだけ塗りたくなかったので、今思えば、十分な量ではなかったのだと思います
ステロイド薬は怖い!というイメージはどこから来たのか
わが子が大きくなった後に、医師にステロイドに対する嫌悪感を話したところ「あぁ、お母さんはちょうどそれぐらいの世代ですもんね」と言われたことがあります(ざっくばらんに話せる関係性の医師との会話です笑)。
調べてみるとニュース番組等でステロイドの副作用問題が過剰に報道されたのは1990年代前半のこと。確かに私はそのニュースを目にし、その後高まるステロイド忌避の風潮の真っただ中に育っていました。
マイナスのイメージは報道されると一気に広まりますが、その後、訂正されたとしてもなかなか浸透しませんよね…
私は怖いというイメージを持ったまま長男の湿疹問題にあたっていました。
「ステロイド」で検索すると罪悪感を募らせる結果が…
当時の私はアトピーやステロイドについてインターネットで検索していました。「ステロイドを使うと副作用がある」「脱ステロイドでこんなにきれいになった」という文章を読んで、私の中でのステロイドに対するイメージはますます悪くなり、それを息子に使っていることへの罪悪感がどんどん増しました。
実際に脱ステロイドで症状が改善した方もいるのだと思います。私が勝手に罪悪感を抱いただけかもしれません。しかし、そのときの私はとにかく必死で藁にもすがりたい気持ちでした。そして「脱ステロイドをしたい」という気持ちへと傾いていきました。
アトピーやアレルギーについて、不安を解消するためにネットで検索しすぎるのはあまりおすすめしません…と言いつつ、この記事もそうですが…^^;
脱ステロイドで有名な皮膚科を受診
息子が幼稚園のときに知人に紹介された脱ステロイドで有名な皮膚科に行ってみました。その皮膚科の方針はステロイド薬や保湿薬は使わず、食べ物の制限や入浴剤で治療をおこなうというものでした。
待合室には大勢の人がいて、人気が高いことがうかがえました。先生も主張が強いわけではなく、私がそれまで行っていたステロイド治療を否定するわけでもなく、淡々と説明してくれて好印象でした。
「体がもともと持っている力を引き出す」
「一旦リバウンドはあるが、その後、良くなっていく」
という説明と、日常生活や食べ物の注意点がびっしりと書かれたプリントと漢方薬を処方され帰宅。脱ステロイド生活が始まりました。
ステロイドを使う罪悪感は減る…一方で息子の苦しみは増す
指導の通り日常生活に気を配り、脱ステ生活が始まりました。私はステロイドなしでなんとか息子の皮膚を良い状態にしたいと意気込んでいました。
それまで私は薬を塗りながら、子どもの体に悪いことをしているのではないかという罪悪感をぬぐえずにいました。脱ステロイドをすることでその罪悪感は消えました。しかし、子どもの皮膚状態は悪化の一途をたどりました。
「一旦リバウンドはあるが、その後、良くなっていく」
という言葉を思い出し「これはリバウンドだ」と思い、その後も数度通院し、治療を続けました。しかし、湿疹は悪化し痒みはひどくなる一方。そしてある日、息子が痒みに耐えかねて「もう嫌!なんとかして」と叫んだことでハッとしました。
私が「脱ステは親のエゴかもしれない」「脱ステをやめよう」と思った瞬間でした
再びステロイドを使った治療に戻る
その後、一般の皮膚科に通院してステロイドを使った治療を行うようになりました。ただ、やはり一進一退を繰り返し「完治した」と実感できないまま時は過ぎていきました。一方で脱ステをしていた時期があったおかげで「薬を塗っているからこの程度の症状に抑えられているんだろう」と思えるようになりました。
アトピー性皮膚炎の治療のため、ステロイド以外の薬も使いました
ステロイドで皮膚を健やかに保つことの意味を理解する
この間、次男が誕生しました。次男は乳児期からひどい湿疹に悩まされ、その後、食物アレルギーと診断されました。その後、食物アレルギーについて学んでいく過程で、ステロイドを使ってしっかりと湿疹を治すことの大切さを知りました。
国立成育医療研究センターのHPではアレルギー疾患の発症予防の1つとして「アトピー性皮膚炎の予防」という項目があります。
皮膚のバリア機能が障害された状態で、早期に十分な対応がなされず皮疹の改善が遅れると、食物アレルゲンの皮膚感作が進行します。スキンケアを徹底して行い、皮膚バリア機能を改善し、新たな皮膚感作を起こさないようにしましょう。
国立成育医療研究センター|アレルギーについて アレルギー疾患の発症予防
また、アレルギーの発症については以下のように説明しています。
正常な皮膚は、角質に守られており、異物が侵入しにくいつくりになっています。しかし、湿疹などがあり、アレルゲンが皮膚のバリアを通過して、表皮や真皮に侵入すると、免疫細胞と反応して感作が起こります。これを「経皮感作」といいます。
(中略)
近年の研究結果から、スキンケア不足による「経皮感作」により食物アレルギーは進行し、食物アレルゲンを症状なく食べて摂取を続けることにより「経口免疫寛容」が誘導されることがわかってきました。
国立成育医療研究センター|アレルギーについて 経皮感作と経口免疫寛容
皮膚のバリアが正常に働く状態にしておくことは食物アレルギー予防の観点からも大切なこと。これは多くの方に知ってほしいです。
ステロイドの正しい塗り方を知る
その後、引越しを繰り返しましたが各地で薬の塗り方をしっかりと教えてくれる皮膚科を探して治療を続けてきました。また、自分の皮膚を守るために、汗が出たらすぐに拭いたり、洋服を清潔なものに着替えたり、スキンケアに気を配ったりと、生活習慣から気を付ける子に育ちました。
ステロイドが怖いと思っていた私のイメージは「医師の指示を守らず適当に使うステロイドは良くない」に変わりました。
これはどの薬にも言えることですよね
ステロイドが不安なら、皮膚科を受診して医師に聞こう
ステロイド治療も脱ステロイド治療も経験し、我が家はステロイドを使った治療を選択しました。皮膚科医の指導のもと、これからも必要があれば塗っていこうと思っています。
私は医師でも専門家でもないため、脱ステロイドを否定するわけではありません。しかし、ステロイドについての誤った情報がよくテレビ番組で放送されるのも事実です。ステロイドを使うにしても使わないにしても、テレビや個人の経験談だけを鵜吞みにせずに、実際に皮膚科に行き、医師に質問してみることをおすすめします。
食物アレルギー児の親としては…湿疹は早めにしっかり治した方がアレルギー予防になる!というのを声を大にして言いたいです。